“桐蔭席(とういんせき)”



東山七条を山手に向かって坂を上り、
京都女子大学の正門を通り過ぎると、
大きな駐車場があります。

その駐車場の奥に、ひっそりと佇む“桐蔭席”。

表札には、今日庵 千宗室と書かれておりました。

たん熊北店のご主人、栗栖正博さんが、そこで懸釜をされるという​ことで、ご招待いただきました。

初めて伺う“桐蔭席”。

小雨がしとしと降る中、今日は、比較的暖かいですね。と、
玄関番さんにご挨拶をし、門をくぐりました。

きれいに松葉の敷かれた玄関を入り、受付を済ますと、
寄付きには、すでにたくさんの方が、来られていました。

しばらく寄付で待たせていただいたのち、本席に通されました。

四畳半のお席に、行燈の明かりと、やわらかな外の光で、
雨が降ってはいたものの、お茶室の中は十分な明るさでした。

亭主の栗栖さんが出てこられ、挨拶をされました。

今日の室礼は、料理人の栗栖さんならではの室礼。

本席の掛け軸は、「我酔亦人楽」(われよいひとまたたのし)と
書かれていました。
割烹料理人の栗栖さんが、自らも飲んで、お客様を楽しませている
様子がありありと浮かんできました。

香合は、鰹節。本物さながらの大樋(おおひ)焼きでした。
茶杓には、白魚(しらうお)という名がついておりました。
お菓子は、老松さんの引千切(ひちぎり)。
ヨモギ団子の上に、紅白のきんとんがのっていました。

お薄を一服いただいて、点心席に移りました。

点心席の室礼が、また変わっていました。
今までに見たこともない室礼でした。

床には、「一酎」と大きく書かれた軸が掛けられ、
その前に、大きな朱杯に、なみなみとにごり酒
注がれていました。
その盃に、大きな徳利が掛けられていました。

まるで、お酒が注がれているように。

すごく、栗栖さんらしいユニークな室礼に、
なんだかすごく感動しました。

そして、菊姫にごり酒で、杯をあげ、
たん熊北店さんのお料理をいただきました。

お茶、お菓子、お料理、何をとってもそつなく、
流石だなと思いながら、その余韻に浸り、
桐蔭席を後にしました。

あまりにも、興味深い室礼に、写真を撮りたかったのですが、
そんなことができる場でもなく、入り口だけをワンショット。

平八茶屋( http://www.heihachi.co.jp )