嚥下調整食の試み



昨年10月より始めた取り組みが、ようやく一つの形となりました。

NPO法人「京滋摂食・嚥下を考える会」の医師、管理栄養士の方々と私の所属するNPO法人日本料理アカデミーのメンバーで、考えた嚥下調整食。

それまで、嚥下調整食というのは聞いたこともなく、初めて病院に伺ったときに、L0〜L5(常食)までを順番に試食させてもらったのが最初でした。

ゼリー状のものから、ゲル状のもの、そして、柔らかく焚いたものまで、順番に一通り食べさせていただきました。

その時の感想は、少しならいいけれども、これは食べ続けられないなというのが正直なところでした。

その理由は、あまりにも単調で変化がないから。

それは、味も、食感も。

我々が常に食べている常食は、味にも変化があり、食感の変化もあります。

だから、食べ続けられる。

嚥下調整食に、少しでもそんな要素が取り込めないかと思ったのが、最初の試みでした。

それから、毎月、管理栄養士さんたちと集まって、意見交換しながら、試作を作って、お互い感想を述べ合いました。



我々も、嚥下調整食の制限や決まり、どの程度までいいのかを体感しながら学んだのです。

回を重ねるうちに、実際に患者さんに食べてもらおうということになり、9月17日(敬老の日)に、4つの施設、愛生会山科病院、第二岡本病院、介護老人保険施設 萌木の村、大原記念病院で、L3の嚥下調整食を実際に患者さんに食べてもらいました。

この松華堂は、我々と話し合いを重ねた管理栄養士さんが、自分たちの施設の調理人さんと一緒に作ったものです。

調理から、味付け、盛り付けに至るまで、各施設の調理人さんが管理栄養士さんと作られたものです。

この松華堂を作るのに意識したことは、まず、日本料理にとって大切な季節感。
そして、味の変化。
そして、できる限りの食感の変化。

L3だけでなく、すべての食事を作りながら、塩分摂取を控えなくてはならない方、糖尿の方と個別対応をしなくてはならない中、とても手間のかかる大変な作業だったと思います。

調理人の方には、頭の下がる思いです。

でも、患者さんの笑顔、患者さんの涙を見ると作られた方も、疲れを忘れ、本当に喜ばれておりました。

適正な栄養を計算し、安全な食事を提供する管理栄養士さんとお客様に喜んでいただきたい一心で作る我々料理人との接点が、今回の松華堂につながったと思います。

この取り組みは、まだ始まったばかり。

最初の小さな形ができました。

これからも皆様の笑顔のために、続けていきたいと思います。



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